(読んだ本)十年屋-時の魔法はいかがでしょう?-(作:廣嶋玲子/絵:佐竹美保/静山社)
保管期間10年、対価、寿命1年分
こんな話
大切だけど、今持っておくことが出来ない大切な宝物を、10年間の期限付きであずかってくれる魔法使いの営むお店「十年屋」
保管を望む人のところに、2つ折りのカートが届く。それを開けばそこは「十年屋」うず高く積まれた宝物たちと、それを管理する魔法使いと、執事の猫がお客さんを迎えてくれる。
宝物の保管期限は10年、対価は寿命1年分。きちんと契約内容に納得いただけたら契約書にサインをして取引の契約は終了。それからお客さんが望むまで、大切に宝物を預かってくれます。
10年経つとお店から、保管期限のお知らせと、宝物をどうするかの案内が届きます。取りに来てもいいし、もう必要でなければお店で引き取ることの可能です。
そんな不思議なお店の「十年屋」と、お客様と宝物たちの物語。
それから、魔法使いとの契約は絶対である。それを破ることは、相応の対価を払わねばならない。
感想
10年という時間はなかなかに長い。文字を書けない子供でも、10年経てば物の分別のつく年齢にもなるし、親とうまくいかない10代という年代でも、10年経てばそれなりに物の分かる大人になっている。
物と思い出はセットであることが多い。10年という時間は環境も本人の気持ちも変える。預ける瞬間はとても大切な物でも、時間が宝物を手放す気持ちの区切りを付けてくれる時もある。
それを持っておくとどうにも気持ちが落ち着かないものも預かってくれる。この落ち着かない気持ちも、時間とともに感情が薄れたり、忘れたりして行く。時間が経って、物が還ってきた時、改めてその時の感情と向き合えたりもする。
5つ目のエピソードでは10年の時を経て祖父から懐中時計を贈られる話があります。この話はすれ違った祖父と孫が、懐中時計だけでなく、祖父から孫へ、大事な気持ちも贈られたんだなと思う良い話でした。『形あるものはいずれ壊れる、だから、大切に使う意味があるんだ。』というセリフが心に深く刺さりました。
好きポイント
十年屋の「なのです」口調がかわいいカラシという執事の猫が出てくるんですが、その執事猫さんがお客さんを美味しい飲み物とお菓子でもてなすシーンがあります。お客さんが好む飲み物とお菓子を準備してくれるし、どれもおいしそうです!私も猫さんにもてなされたいです。
それから、私は子供の頃読んでいた本は文章よりも絵に引かれて本を手に取る事が多い子供でした。その中でも「佐竹美保さん」の名前は大人になった今でも思い出せます。
そんな佐竹美保さんが表紙と挿絵を描かれているのがこの「十年屋シリーズ」本を手にとって「この絵、好き!!」と気持ちは子供の頃と同じでした。挿絵もとっても良かった!カラシがとても可愛いのです。
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