1頭の芦毛の牡馬と、それをめぐる陣営の話
(読んだ本)銀色のステイヤー(作:河﨑秋子/角川書店)
競走馬って、いいね!
こんな話
4月下旬、北海道の小さな牧場に1頭の芦毛の牡馬が生まれました。その牡馬はすくすくと成長し、オーナーも決まり、競走馬としてデビューします。芦毛の名前は「シルバーファーン」、新馬戦を勝ち、2歳重賞・2歳G1を取りクラシックを目指します。
皐月賞に出走し、次に挑んだダービーでゴール間際にアクシデントに見舞われてしまいますが、菊花賞を目指すべく、一度生産牧場へ戻されます。そこで調子を取り戻し、クラシック最終戦、菊花賞に挑むのでした。
登場人物
・生産牧場の牧場長…父親から牧場を引き継いだ。ジョッキーの兄がいる。
・生産牧場の従業員…ちょっと頼りないけど気の良いあんちゃん。
・生産牧場の新人…訳ありの新人ちゃん、騎乗技術はピカイチ。
・調教師の先生…「より良く、より速く、より強く」がモットーの調教師。怒ると怖い。
・調教助手…騎手から厩務員に転向した過去がある。周りに「鉄子」と呼ばせている。
・騎手…のらりくらりとした中堅騎手、上記調教師の厩舎に所属。実家が生産牧場。
・馬主さん…夫の馬主資格を継いだ未亡人の方。シルバーファーンが初めての持ち馬。商売上手。
感想
・1頭の競走馬が生産されて、競走馬としての教育を受け、入厩し、デビューするまでの過程
(なんなら引退、その後の話まである。競走馬の半生が追えます)
・生産牧場の仕事、調教師、調教助手、騎手、装蹄師の仕事、考え方
・馬主さんのこと
・大きなレースに挑むとは
というのを知ることができました。
皆さん競走馬に対して真摯に向き合っていて、普段見ることのできない競馬界を少しだけ垣間見えた気がします。
クラシック最後に挑む菊花賞のレースシーンはとても熱かったです!
登場キャラクターたちがどんどん成長していくのも読んでいて面白かったです。
生産牧場の人員不足から雇った訳ありスタッフが、色々なことがあって、色んな事を言われて、彼女なりに考えて、精神的に成長していくのが読んでいてとても良かったです。
この芦毛君、賢いし、人間を見るし、負けず嫌いです。それが彼の強さなのかなって思いました。牧場で彼に決めた馬主さんの相馬眼もなかなかのものです。
個人的に、シルバーファーンと一緒にクラシックを完走した二冠馬君と同世代の三冠牝馬ちゃんとしのぎを削った古場世代の話をもっと読みたかったです!あと、作中のセリフからどうやらこの作品にも「横山」という騎手がいるらしいのです。なんかすごく面白い競馬を見せてくれそうな騎手がいるんだろうなと思いました。
競走馬がたどる、引退の後の話もあって、輝かしいばかりでない競馬の側面も少しだけ知ることができます。また、乳母馬を借りる場面で、乳を分けてもらう乳母馬も乳を出すためには出産しないといけないわけで…と考えると、その乳母馬が産んだ赤ちゃんの存在も知ることができて、馬産に関しては知らないことばかりだなと思った1冊でした。
最初の方で、新規で馬に興味を持った人たちのことを「アプリゲームから入った人」ってう表現が少しずつだけあるんですが、多分ディスではない、はず!!(と、アプリゲームから競馬に興味を持って競馬を始めた民が言っております)
最後に、作中の好きなセリフを1つ。「祈りは無料」「信じることはノーコスト」
今後競馬をする時、推しの競走馬を応援する時、また競馬とは別に何か祈り・信じようと思った時、「祈りは無料」って言葉を思い出して、ただ祈る・一心に祈るということをしてみようかと思いました。
好きな競走馬の世界を知ることができた1冊でした。とても楽しく読めました!
今日はここまで、それではまた次の本で。
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