【読書感想】妖怪の子預かります④

読書の時間

今度の子どもはお面を被った女の子

(読んだ本)妖怪の子預かります③(作:廣嶋玲子/絵:Minoru/東京創元社)

ワケアリ娘と父のお話

4巻での出来事

▶ネズミの子を預かる

 月夜公の3本の尻尾を支えるお役目を持つ3匹のネズミ達。月夜公が甥の津弓を可愛がる様子を見て自分たちも月夜公の津弓のように「慈しむ相手」が欲しいと思います。しかし、このネズミたちは「思い」が形になって生まれた妖怪。なので、時間をかけて石に愛情を注ぎ、いずれ形をなす日を待っています。そんな大切な石をこの度弥助に預けることになり、弥助もこの石に愛情をたくさん注ぐのでした。

▶手毬の妖怪と語り合う

 曰く付きの手毬を引き取った弥助。その手毬は付喪神だった!ただこの手毬、子どもが憎くてたまらない様子。それはこの手毬が作られた過程に問題があったようで、、、

▶お面の子どもを預かる

 医者の宗鉄の娘を預かることになった弥助。ただこの娘の「みお」はお面をはずそうとしない。コミュニケーションにも最初は難があったものの、時間をかけて打ち解けていくのですが、問題はなかなか根深いようで、、、

感想

▶ツンデレ月夜公

 思いが形になるといっても、ネズミ妖怪だけでは何年かかるかわからないからって、ネズミたちのいない間に石をネズミに変えてしまった月夜公。「誕生の瞬間に立ち会えずさぞくやしがるだろう」という月夜公でしたが、アレ、この妖怪もしかしたら良い妖怪なのかもしれない、と思うのでした。

▶手毬付喪神の生まれた理由

 手毬の付喪神は「子どもに恵まれなかった女性が他所でつくった旦那の子を養子として招き入れ、娘として育ててはみたものの実は腸煮えくり返る思いで育てていた。そんな感情をこれでもかと詰め込んだのがこの手毬です」という生い立ちで、どうにも子どもと仲良く出来ないと嘆いていました。千弥さんの一計と、その手毬を持ち帰った津弓のお陰で、次は良い付喪神としてまた出会えることでしょう。というか、津弓溺愛付喪神が完成されるそうです。違った意味で恐ろしい・・・かも?

▶寝言猫、間接的に弥助のお腹を破壊する

 寝言猫は寝言を食べる妖怪。とてもかわいい小さな猫の形をしています。そんな寝言猫、寝言を食べるために寝言を多めに出させるようで、寝言猫を憑依させた状態で寝た弥助君が起きてみるとなにやら上機嫌で食事を作る千弥さんの姿が。

▶みおの心

 妖怪と人間の子どもであるみおちゃん。しかし、みおちゃんは人間として育てられました。母親が父親が人間として生きることを望んだからです。

 ある日みおちゃんは無意識に人間離れした行動をしてしまい、みおちゃんの母親は心が壊れてしまいます。激しく心乱した母とそれを止める父を見てみおちゃんもショックを受けます。それまで幸せに暮らしていた親子はここで大きな溝ができてしまうのでした。

 それでも娘のピンチに現れるのが父なのです。父は娘をピンチから救い出し、わだかまりも溶け、また親子に戻ることができたのでした。

▶虐げられた側が虐げる側に変わる時

 今回の敵の1人、登場時は優しい尼さんだったのにその実、甘い言葉を囁いて仲間に引き入れたいだけの悪い人でした。みおちゃんと弥助君を拐かし、みおちゃんを従わせるためだけに弥助君も角川したと明かします。

 この尼さん、青寿と名乗るのですが、片目が青いことで村人から嫌われ、虐げられてきました。その結果青寿は言葉で予言と言いつつ、そうなるように仕掛け、人々を不幸にしてせせら笑えるタイプの人間になってしまいました。被害者が加害者に変わってしまった、と思いました。

 それにこの青寿、みおちゃんを手下にする目的が「妖怪を手下にしたかった」とかだからもう救いようのない悪かもしれません。

 このあとこの青寿一行、大事な娘と大事大事な養い子を危ない目にあわせたことで、みおちゃんの父と千弥さんに処されたのは言うまでもない。妖怪は情が深いのである。

▶MVP津弓

 この度の拐かし、みおちゃんの父親を呼んできたのは津弓君でした。君が今回のMVPだよ!!

 あと月夜公を「優しい」って言えるの、やっぱり君くらいだよ!!

▶新な火種を残して

 親子のわだかまりが溶けたみおちゃん。爆弾発言をして去って行きます。この爆弾発言によってみおちゃん父と千弥さんがバチバチになってしまうのは仕方がないかなと思います。

 さて「私が狙うのは自分の幸せに気付きもしない欲張りな人間だ。(騙した裕福な家の若奥様は)恵まれた生活をしているのに自分は不幸だと嘆くばかりだ。一度痛い目にあえばいいんだ」(だいぶ意訳)という青寿の台詞があります。

 青寿の話には一理もないのですが、「自分の幸せに気付きもしないで自分が不幸だと嘆くばかりの人」に自分はなっていないかとふと考えてしまいました。今ないものではなく、本当は今手元にあることに目を向け満足することも必要なのかもしれない、と思いました。

悪役の台詞についてアレコレ考えられるのも読書の楽しいところだと思います。

今回はここまで。

では、また次の本で。

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