誰が織田信長を✕したのか
読んだ本:六月のぶりぶりぎっちょう(著:万城目学/出版:文藝春秋)
「六月のぶりぶりぎっちょう」P69~
因みにぶりぶりぎっちょうは、「安土桃山時代あたりに子供たちの間で流行った遊び」らしいです。
こんな話
高校の歴史教師、主人公の滝川は同僚のソフィー、同じく歴史教師のトーキチローとともに研究発表会に出席するために前入りで京都を訪れていた。フランスから来たソフィーのためにツアーを企画した滝川は、トーキチロー先生とやんややんやと言いながら京都を巡っていた。
聞香体験をしたり、名所を巡ったりした後で立ち寄った居酒屋で「本能寺の変」について話す3人、店の大将やお客も交えては盛り上がります。
居酒屋を後にし、ホテルへ移動しようとしたところ易者に出会った滝川先生、易者の方に半紙を渡され「持っていけ、それがアンタを入口に誘う」(P121)と意味深なことを言われます。
それからどうホテルまで行ったのか、気付けばホテル。日付は6月2日、時刻は午前6時2分、銃声のような物音を聞き部屋を出る滝川先生。開け放たれた扉へ近づき、中に入ると、そこには血を流して倒れている男性が。失神する滝川先生。
次に目を覚ますと、ソフィーやトーキチロー先生、聞香処の店員さん、居酒屋の大将、居酒屋にいたお客さんの面々が。どういう状況かはかりかねる滝川先生でしたが、どうにも彼らと会話が噛み合いません。
会話は全く噛み合わないし、どうやら外にも出ることができない様子。そんな滝川先生に1本の電話がかかります。電話の相手は言います。
「歴史の真実を見極めろ、対話し、相手の言葉に耳を傾けろ。その心を溶かせ」(P179)と。
果たして滝川先生は謎を解決し、この不思議な空間から出ることができる出来るのか!?
感想
不思議空間にいる間、滝川先生は事件に巻き込まれて、人の話を聞き、行動し、解決します。しかし、それで開放、というわけにも行かないようでした。
今作品、滝川先生が歴史の先生で本当に良かったと思います。先生を通じて、この時代のあたりの話を知ることができます。先生方や登場人物の話を聞くだけでも、本能寺の変あたりの話を知ることができます。
結論から言うと、本能寺の変の真実は分かりませんでした。それを知ることを滝川先生は望みませんでした。それでも信長本人も「どうして?」と考えているかもしれないと思うと、信長も人間なんだなと思ってしまいました。
本能寺の変の謎はいつか分かる日が来るのでしょうか?それとも、分からないまま、人々の間で「ああでもない・こうでもない、こうかもしれない・そうじゃないかもしれない」と想像をかき立てられ続けるのでしょうか。それはどちらも・どちらでも、とても良いのではないかと思います。
さて、「三月の局騒ぎ」と「六月のぶりぶりぎっちょう」のどちらにも『想いを伝えることができるのは、この世に生きている者だけ』(P53、239)という台詞が出てきます。私達が想いを伝えあえるのは生きている、この短い時間の間だけ。伝えあうことは難しいことが多く、上手くいかないこともあるし、伝えたいのはいい想いばかりではないけれど、それでも伝えあうことが出来たらいいな、と思いました。
京都に土地勘がないので、なかなか登場人物たちと同じ風景を見ることができなかったのですが、なんだかとても京都に行きたくなりました。同じ風景を見たくなりました。滝川先生が計画したツアーを再現した旅行も面白そうだな、なんて想像したり。いつか行ってみたいです、京都。
古都京都、なんだか歴史上の人物とすれ違えてしまいそうな気がしませんか?
今回はここまで。
では、また次の本で。
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